人が幸せを感じている時、私たちの体内では何が起きているのでしょうか。 答えは、「幸せホルモン」にあります。
セロトニン、ドーパミン、オキシトシンの3つのホルモンは、私たちの感情、心の安定、そして幸福感に大きく影響を及ぼします。
この記事では、それぞれのホルモンがどのように私たちの心と体に作用し、日常生活で幸せを感じる瞬間をどのように作り出しているのかを解説していきます。
愛情を深めるオキシトシン、達成感をもたらすドーパミン、心の平穏を保つセロトニンを深く知って、日常生活の満足感に繋げていきましょう。
精神の安定を保つセロトニンの活動とその役割
セロトニンの神経伝達物質としての活動
セロトニンとは、幸せホルモンのドーパミンとノルアドレナリンを調節し、精神の安定を保つ働きを持つ脳内の神経伝達物質の一種です。
必須アミノ酸の一種である「トリプトファン」から生成され、特にストレスに対しての働きが強く、大脳深部の中脳で生成されます。
セロトニンが脳内での働きとその影響
セロトニンは、喜びや快感に関係する「ドーパミン」と、驚きや恐怖に関係する「ノルアドレナリン」の調節・コントロールを行います。
セロトニンが不足すると、ドーパミンとノルアドレナリンのバランスが崩れうつ症状や常時不安感を感じることに繋がり、精神症状を引き起こす可能性もあります。
毎日、ストレスを少なく生活するためには、セロトニンは欠かせない物質と言えます。
「快感」に関わるドーパミンの役割と作用
ドーパミンが与える効果
ドーパミンは脳内で生成される幸せホルモンの一種であり、「快感」に大きく関わっている重要な神経伝達物質です。
この物質は目標を達成する、困難を乗り越えるなどポジティブな出来事によって脳内で分泌されます。ドーパミンが適切に脳内で分泌されることによって次の行動に対するやる気が湧き、日常生活における満足感に繋がってきます。
しかしドーパミンは過剰に感じすぎると悪い面もあります。ドーパミンは過剰に感じすぎると依存性が増してしまい、感じないとやる気が起きず、快感を得るためにたくさん買い物をしたり、アルコールをたくさん摂取してしまうという負の面もあります。
日々のやる気を保つためにはドーパミンのバランスが重要です。日頃の運動やバランスの良い食事、十分な睡眠などを意識することでドーパミンのバランスを保つことができます。
ドーパミンの分泌と脳内での役割
ドーパミンの影響は単に快感だけに留まらず、その快感を利用することで日々の学習の促進や習慣化に繋げることが出来ます。
学習過程や習慣化の過程において、自分で行動に対して肯定的な気持ちを持ち、その行動を繰り返すことでドーパミンの分泌が促され、行動の継続性が強化されます。
簡単に言うと、勉強や習慣を続ける度に自分の中で満足感を感じることでその行動に快感を覚えてまたその行動をしたくなるようにする、ということです。「1時間でも勉強をした」「今日も軽く運動ができた」と自身で肯定することでその行動が脳にとって「快感」となり、習慣化に繋げることが出来ます。
勉強でも運動でも習慣化がニガテという方が、少しでも出来たタイミングで「今日もできた」とポジティブになることで、習慣化が図れるかもしれません。
不安の軽減をするオキシトシンの役割と効果
オキシトシンの役割とは
オキシトシンの役割は主に、不安や恐怖感を軽減する、ストレスを低減する、社交性を高めるなどが挙げられます。この物質は脳内の視床下部から分泌される神経伝達物質の一種です。
オキシトシンが分泌されると、自律神経の一種である副交感神経が優位になり、心身がリラックスするようになります。体がリラックスモードに入ることで、不安感などが弱まり、ストレスを和らげるため、オキシトシンは日常を快適に過ごすために重要な物質です。
別名「愛情ホルモン」オキシトシンの効果とは?
オキシトシンは別名「愛情ホルモン」とも呼ばれています。このホルモンは親子や夫婦、カップル間の絆だけでなく、友人や社会的な関わりを通しても分泌されます。
幸福感を高めて心身の健康に影響を与えるオキシトシンは、精神的な安定や幸せを感じるために不可欠な物質と言えます。
また、オキシトシンが人間関係におけるストレスを軽減させることで、社交性の向上にも繋がります。
人が感じるストレスの原因の大半は人間関係という調査結果も出ており、人との関わりにおける不安を減少させることで、ストレスの減少にも繋がり、社交性の向上に繋がります。
少ないとどうなる? 3大ホルモンの特徴
セロトニン不足の人の特徴
セロトニンが不足すると、疲労感やストレスを感じる場面が多くなります。
セロトニンは精神の安定を調節する物質であり、安心感などに繋がる働きを脳内でします。そのため、セロトニンが不足してしまうと、精神の安定が上手く行われなくなってしまい、精神的な不調が見られる場合が多いです。
疲労感やストレス以外の症状としては、仕事の集中力低下や不眠、感情の起伏が激しくなるなどが挙げられます。日常的にこれらの症状に心当たりがある方は、体内のセロトニンが不足している可能性もあります。
ドーパミンが少ない人の特徴
ドーパミンが不足すると、「やる気の低下」「記憶力の低下」「集中力の低下」が引き起こされます。
ドーパミンは達成感や幸福感などの快感を感じた時に脳内で分泌され、快感を感じたことによって再度その快感を脳で感じようと、やる気や集中力を引き起こします。
そのためドーパミンの分泌量が少ないと、日常のやる気低下や無気力感、疲労感などを感じ、生活の質の低下に直接的に関わってきます。
日常の小さなことに喜びを感じることで、日常的にドーパミンの分泌が促されるため、満足感に繋がります。
オキシトシンが不足している人の特徴
オキシトシンが不足すると、精神的に悪影響を及ぼすことや、ストレスへの耐性が弱まってしまう可能性があります。
オキシトシンは人の繋がりを深める役割を果たします。そのため不足すると孤独感や疎外感を感じることが多くなり、社会的な繋がりが無いように感じてしまい、精神面で不安を感じる場面が多くなります。
また、ストレス耐性が弱まることによって、日常での些細な出来事でメンタルがマイナスになってしまい、ネガティブ思考になってしまう可能性もあります。
オキシトシンにおける重要なことは「人との関わり」であり、基本的に人と関係することで分泌され、幸福感に繋がります。積極的に人と関わり、話すことでオキシトシンの不足は解消される可能性が高まります。
幸せホルモンを分泌させる方法とは?
セロトニンの分泌を促す方法
セロトニンの分泌を促す方法を2種類紹介します。
日光を浴びる
セロトニンの分泌を促す一番簡単な方法としては、「日光を浴びる」ことが挙げられます。セロトニンは日光を浴びると分泌されるため、休みの日にあまり外に出ないという方は、少しの時間散歩をするでもいいので外に出ることをおすすめします。
セロトニンを増やすための食材
食事からも体内のセロトニンの量を増やすことが出来ます。セロトニンは必須アミノ酸の一種であるトリプトファンというアミノ酸を元に作られます。
トリプトファンを多く含む食材としては、鶏むね肉や牛ひれ肉、ナッツ類や大豆製品などが挙げられます。トリプトファンはアンチエイジングや集中力の向上にも繋がるため、意識して摂取することをおすすめします。
ドーパミンの分泌を促す方法
ドーパミンの分泌を促す方法を4種類紹介します。 自分でできそうなものから日常的に取り組んでみてください。
比較的簡単な目標を設定する
ドーパミンは目標を達成した時に、快感として分泌されます。そのため日頃の小さなことで簡単な目標を設定し、達成することで脳内でドーパミンが分泌されます。
設定する目標は「これを明日中に達成する」「明日は〇時に起きる」「明日はこの人に声をかける」など、本当に簡単で自分の行動次第で達成できそうだな、というレベルが望ましいです。
好きな音楽を聴く
自分の好きな音楽を聴くことで、脳内でドーパミンが分泌されることが実際の研究によって分かっています。
人が好きな音楽を聴いているときは快感を感じやすく、「ランナーズ・ハイ」と呼ばれる「長時間走っていると気分が高まりずっと走っていられるような幸福感を感じること」に近い感覚を感じると言われています。
ただ、好みでない曲を聴いている時はドーパミンが分泌されないため、自分だけの好きな曲だけを入れたプレイリストを作って、日常的に聞くことをおすすめします。
タンパク質を摂取する
ドーパミンの原料はタンパク質に含まれているアミノ酸です。タンパク質を含む食材を摂取することでドーパミンの分泌を促すことが出来ます。
タンパク質を多く含む食材は、生ハムや鶏ささみ牛モモ肉などの肉類や、いくらやするめなどの魚介類、きな粉や油揚げなどの大豆製品、パルメザンチーズや脱脂粉乳などの乳製品が一般的に多く含まれています。
瞑想をする
瞑想を行うことでドーパミンが分泌されることも研究で分かっています。
瞑想中は「ガンマ波」と呼ばれる脳の認知機能を活性化させる脳波が増加します。ガンマ波は人の集中力や記憶力を向上させ、幸福感を高める働きがあるとされています。
長時間やる必要はなく、5分程度でも十分です。何か集中できない、やる気が湧かないと感じた時は瞑想をしてみてはどうでしょうか。
オキシトシンの分泌を促す方法
オキシトシンを分泌する方法を2種類紹介します。
スキンシップ
スキンシップはオキシトシンの分泌を促します。抱擁や手をつなぐだけでなく、見つめ合うことや会話を通してもオキシトシンの分泌を促すことができます。
これは夫婦や恋人間のみならず、友人や親子といった関係でも同様のことが言えます。親しい友人と会話しているときに幸せに感じたことはないでしょうか。まさにそういった時に脳内ではオキシトシンが分泌され、幸福感を脳が感じているときです。
恋人や友人、子供とのスキンシップを積極的に行うことで、オキシトシンの分泌を促すことができます。
思いやりを持つ
オキシトシンは「思いやりホルモン」とも呼ばれており、人を想った言葉や行動を行うことで、行動を行った人のオキシトシンが分泌されることが分かっています。
例を挙げるとすると、何か困っている人がいたとします。自分がその人に対して何かをしてあげた時、オキシトシンが分泌されるのは何かを「してもらった人」ではなく、助けてあげた「自分」なのです。
自分から人の手助けをすることでオキシトシンの分泌を促すことができます。
おわりに
人が幸福感を感じているとき、体内では3大幸せホルモンと呼ばれるセロトニン・ドーパミン・オキシトシンが分泌され、それぞれの良い役割を果たしています。
それぞれのホルモンは、人の日常における悪影響を減らし、幸福感を感じるために重要な役割を果たします。
日光を浴びたり、好きな音楽を聴いたり、親しい仲の人とスキンシップをするなど、それぞれの分泌を促すことで、日常の幸福感に繋がります。できることから実践していき、日常の幸福感を上げていきましょう。