みなさん内因性カンナビノイドをご存じでしょうか。
内因性カンナビノイドは広く知られていない物質ではありますが、人の健康な毎日を支えるために無くてはならない物質です。
今回は人に不可欠な内因性カンナビノイドについて、その基本知識や重要性、不足時に引き起こされる症状などを交えて解説していきます。
内因性カンナビノイドとは?その基本と重要性

内因性カンナビノイドとはどんな物質?
内因性カンナビノイドとは、私たちの体内で自然に生成される化学物質であり、神経伝達を調整する役割を持ったカンナビノイドです。
脳や体など様々な部位で合成荒れ、痛みや感情、食欲や免疫機能などの調整に関与しています。
また、内因性カンナビノイドはそのまま直接作用するのではなく、エンドカンナビノイドシステム(ECS)と呼ばれる体内のシステムを介して機能します。
意外と知られていない身体調節機能である「ECS」について、簡単に解説していきます。
エンドカンナビノイドシステムの概要
エンドカンナビノイドシステム(ECS)は、私たちの身体の恒常性を維持するための重要な生体システムです。
ECSはCB1受容体とCB2受容体という2種類の主要な受容体から構成され、それぞれが内因性カンナビノイドと相互に作用しあうことで、身体の調整を行います。
つまりは、ECSには2つの受け皿があり、それぞれが内因性カンナビノイドと作用することで、記憶や痛み、感情といった調整を行っているということです。
皆さんが痛みを感じたときや嬉しさを感じた時、ECSが働いていると考えましょう。
なぜ内因性カンナビノイドが重要なのか
内因性カンナビノイドは、体の機能を適切に調整し、健康を維持するために不可欠な物質です。
前述したように、内因性カンナビノイドはECSを通して感情や痛みといった身体機能の調整を行います。
それは裏を返せば、内因性カンナビノイドが不足することでそれらの身体機能の調整が正常に行われなくなってしまうことを指します。
内因性カンナビノイドが不足すると起きることについては後ほど解説しますが、適度な運動や食事を意識し、ECSの正常な働きの維持が重要になります。
内因性カンナビノイドとその作用メカニズム

カンナビノイド受容体の種類とその働き
カンナビノイド受容体には以下の2種類が存在します。
- CB1受容体
- CB2受容体
それぞれ役割が異なるので、簡単にその違いについて解説していきます。
CB1受容体の役割とその働き
CB1受容体は主に脳や中枢神経系に多く分布しており、気分の調整や記憶の維持、運動機能や食欲の制御などに関与しています。
正常に機能している場合、CB1受容体は神経活動を制御し、精神の安定や神経保護のサポートを行います。
ただ受容体の活性化やCB1受容体と結びつく内因性カンナビノイドが不足すると、不安障害やうつ病といった精神疾患のリスクが高まる可能性があります。
CB2受容体の役割とその働き
CB2受容体は主に免疫系や末梢神経に多く存在し、炎症や免疫機能の調整に深く関与しています。
CB2受容体の主な働きは、炎症の抑制や免疫応答の調整です。
外から入ってきた欣也ストレスによって体内の免疫反応が過剰になると、CB2受容体が活性化し、炎症を抑えるシグナルを送ることで、炎症を抑制する効果が期待されます。
内因性カンナビノイドの種類(アナンダミド, AGなど)
内因性カンナビノイドの種類として、代表的なものにアナンダミド(AEA)と2‐アラキドノイルグリセロール(2‐AG)があります。
至福の分子「アナンダミド」
アナンダミドは「至福の分子」とも呼ばれており、幸福感やリラックスを促進する作用を持ちます。
主にCB1受容体と結びつき、ストレスの軽減や記憶の調整、痛みの抑制などに関与しています。
人の健康を支える「2-AG」
一方2-アラキドノイルグリセロールはCB1とCB2の両方の受容体に作用し、特に免疫機能の調整や抗炎症作用が報告されています。
2-AGは、人の健康を支える内因性カンナビノイドの一種であると言えます。
内因性カンナビノイドの作用と脳内伝達の仕組み
内因性カンナビノイドは通常の神経伝達物質とは異なり、「逆行性のシナプス伝達抑圧」を行います(谷村あさみ・橋本谷祐輝・狩野方伸, 2011)。 出典: 谷村あさみ, 橋本谷祐輝, 狩野方伸「内因性カンナビノイドによる逆行性シナプス伝達調節のメカニズム」(2011), 生化学 第83巻 第8号, pp. 704-714. 参照元ページ
通常、神経細胞の情報伝達はシナプス前部から後部へと一方的に流れますが、内因性カンナビノイドは後部で産生され、前部へと信号を送ることで、過剰な神経伝達を抑制する働きがあります。
このメカニズムにより、ストレス時の過剰な興奮を抑えたり、痛みの感覚を軽減する作用が働きます。
内因性カンナビノイド欠乏症や関連疾患

内因性カンナビノイド欠乏症とは
内因性カンナビノイド欠乏症とは、体内で生成される内因性カンナビノイドのバランスが崩れたり、不足することで引き起こされる状態のことです。
ストレスや不規則な生活習慣、加齢といった要因によって内因性カンナビノイドの分泌量が減少すると、身体調節機能が正常に働かなくなる可能性があります。
まだまだ内因性カンナビノイド欠乏症に関しては研究が必要ですが、一部の疾患や不調との関連が指摘されています。
欠乏により引き起こされる可能性のある症状
体内で内因性カンナビノイドが不足すると、体内のエンドカンナビノイドシステムが正常に機能せず、様々な問題が発生する可能性があります。
慢性痛や片頭痛などの疾患との関連が示唆されているほか、不安障害やうつ病といった精神関連の疾患のリスクを高める可能性も指摘されています。
また睡眠の質を維持する役割から、不眠症や睡眠の質低下を引き起こす場合や、感情のコントロールが難しくなるといったことが可能性として考えられます。
不足した内因性カンナビノイドを補う方法とは?
内因性カンナビノイドの分泌を促進し、エンドカンナビノイドシステムを正常に機能させるには、生活習慣の改善が重要になります。
適度な運動や良質な睡眠は、ECSの正常な働きをサポートします。
また体外から別のカンナビノイドを取り入れることで、体内で不足した内因性カンナビノイドを補う方法も注目されています。
カンナビノイドの他の種類とは?

カンナビノイドには、内因性カンナビノイドの他にもう2種類存在します。
それが
- 植物性カンナビノイド
- 合成カンナビノイド
以上の2種類です。
植物性カンナビノイド
植物性カンナビノイドは主に大麻植物に含まれる天然由来のカンナビノイドで、体外からの摂取によってECSの正常な働きを助けることが期待されています。
最も有名なのは、CBD(カンナビジオール)とTHC(テトラヒドロカンナビノール)といった種類があります。
これらの成分は、サプリメントやオイルといったタイプで販売されており、手軽に摂取できるようになってきている点も魅力的です。
合成カンナビノイド
合成カンナビノイドとは、強い効果を求め、人工的に合成されたカンナビノイドのことを指します。
元々は医療用途などで開発されましたが、昨今ではその危険性から違法薬物としてほとんどの種類が規制対象となっています。
合成カンナビノイドは、CB1受容体やCB2受容体に強く結合するため、強い作用を引き起こすことが危険視されています。
合成カンナビノイドには注意し、絶対に摂取は避けるようにしましょう。
おわりに
今回は内因性カンナビノイドの基礎知識について、ECSとの関係や種類、不足時に引き起こされる可能性のある疾患などを交えながら解説してきました。
内因性カンナビノイドは知られていませんが、ヒトの生命活動を支える重要な物質です。
ただストレスや不規則な生活習慣、加齢によってその分泌量は減少してしまいます。
様々な方法を駆使してECSの正常な働きを維持することで、悩みの軽減に繋がるかもしれません。
ぜひ積極的に試してみてください。